オムニチャネルとは?
オムニチャネルという言葉は、もともと2010年頃にマーケティング戦略を意味する言葉として使われ始めましたが、現在はカスタマーサービスの体制を表す言葉として使われるようになりました。オムニチャネルを実現している企業は、特定の方法ではなく複数のチャネルを準備することで、よりスムーズな対応を目指しています。しかし、多くの企業がオムニチャネル対応に苦戦しているのが現状です。NICEの調査によれば、3分の2以上の顧客が「企業はオムニチャネル対応ができていないように感じた」と回答しています。オムニチャネル体制の構築には、単なる技術の導入だけでなく企業全体の仕組みや働き方も見直す必要があります。それでもなお、顧客が「スムーズなやり取り」を求める今の時代では、この取り組みが成功へのカギと言えます。オムニチャネルの仕組み
オムニチャネルとは、どのような方法(電話、チャット、メール、アプリなど)を使っても、顧客の問題をスムーズに解決できる仕組みのことです。たとえば、ある顧客がチャットボットを利用して質問した後に、電話サポートを選んだとします。このとき、オペレーターがチャットでのやり取りを事前に把握していれば、顧客は同じ説明を繰り返す必要がありません。こうしたスムーズなやり取りが、オムニチャネルの特徴です。マルチチャネルとオムニチャネルの違い
マルチチャネルとオムニチャネルは似た言葉に感じるかもしれませんが、実際は大きく異なります。多くの企業はマルチチャネルサポートを提供しており、電話、チャット、メール、SNSなど複数の方法で顧客対応を行っています。しかし、これらのチャネルが連携していないと、チャネルを切り替えた時に、やり取りを最初からやり直さなければなりません。このような不便さが顧客満足度を低下させます。オムニチャネルのカスタマーサービスを提供している企業も、顧客に複数のチャネルを提供しています。マルチチャネルと異なるのは、問題解決までの間、顧客の情報がカスタマーサービス側で常に共有されていることです。こうすることでよりスムーズに対応でき、顧客の負担も軽減することができます。オムニチャネル実現における課題
企業がオムニチャネルの導入を進める上で、直面するのが以下のような課題です。- システムが顧客の全体像を把握できない
オムニチャネルのカスタマーサービスでは、顧客が利用するすべてのチャネルで顧客情報を共有する必要があります。全体像を把握できるシステムがなければ、オムニチャネルでの運用はさらに難しくなります - 十分な予算がない
オムニチャネルの導入は安価に行える施策ではありません。組織全体に変更がおよび、新しいシステムやスキルへの投資が必要になることも少なくないため、予算がないとオムニチャネル化が円滑に進まないおそれがあります。 - システムや業務が属人化
システムや業務の孤立はオムニチャネルを進める上で大きな課題となります。複数のチャネルにわたってスムーズな顧客体験を提供するには、最適化された業務とスタッフやシステムがうまく連携できるようにする必要があります。 - オムニチャネル化の戦略策定やビジョンが不明確
「そうすべき」という理由だけでオムニチャネルを導入すべきではありません。オムニチャネルは、既存顧客の維持、より高い収益、もしくはその他の事業目標といった「最終的な目的」を達成するための手段です。そのため、オムニチャネル化と事業戦略に互換性があり、それに基づいたビジョンや戦略を採用することが大切です。
オムニチャネルを導入するメリット
オムニチャネル化には、顧客の期待に応え、より優れ顧客体験を提供するため以外にも、さらに現実的な目的と効果があります。まず、オムニチャネルのサポートは一次解決率を向上させ、問い合わせ件数とコストの削減に役立ちます。また、オムニチャネルのアプローチではサービス提供コストも削減できます。例えば、チャットボットなどのセルフサービスは電話サポートよりもはるかにコストが低いので、電話による問い合わせの一部を振り向けることで、大幅なコスト削減が実現できます。オムニチャネル導入におけるポイント
オムニチャネルの導入には、現行のシステムや業務などの大幅な変更が必要です。 さらに、組織をより顧客中心へと意識改革させる必要もあります。以下ではそうした課題を踏まえつつ、導入を成功に導くためのポイントをご紹介します。1.顧客が何を求めているかを理解する「オムニ」は「あらゆる」を意味しますが、企業がサポートチャネルのすべてを導入すべきであるという意味ではありません。顧客からのフィードバックやペルソナ分析に基づいてチャネルを決定することも大切です。例えば、提供しているソフトから得られる情報を分析すると、顧客が求めているサポートチャネルを発見できることもあります。2.優先すべきチャネルを見つけるカスタマージャーニーの調査は、オムニチャネル化の最初の作業に最適です。カスタマージャーニーからは、顧客が遭遇する全てのポイントとそこで引き継ぐべき情報が読み取れます。カスタマージャーニーを調べていくと、優先してオムニチャネル化に取り組むべき項目が浮き彫りになるはずです。3.客観的に現在のシステムを評価するオムニチャネル化成功例の大半はシステムに依存しているため、企業は現在のシステムを客観的に評価する必要があります。新しいチャネルをサポートできない時代遅れのソフトを使っていると、オムニチャネルのカスタマーサービスを提供することはもちろんできません。カスタマーセンターをオムニチャネル対応の際には、オムニチャネルに特化したツール導入を検討すると良いでしょう。4.新たなツールの浸透とオペレーターのトレーニングオムニチャネル化の大きなメリットのひとつは、オペレーターの生産性が向上する可能性があることです。オペレーターが複数のチャネルを連続して(あるいは同時に)処理できるようになれば、稼働率が向上し、少ない人数でより多くの業務をこなせるようになります。新しいツールの浸透とオペレーターのトレーニングは必要となりますが、これらのメリットが享受できる点を考えるとオムニチャネル化に取り組みやすくなるはずです。5.効果測定と目的の設定オムニチャネル化の取り組みにおいて、初期段階でまず行うべきことのひとつは、プログラムの目標を設定し、その目標に対するパフォーマンスをいつどのように測定するかを決めることです。また、新しいスタッフ、業務、システムが成績に影響する可能性があるため、オムニチャネルのカスタマーサービスを提供できる体制を管理し続ける必要があります。オムニチャネル化の目的と、詳細なロードマップを決めることが、オムニチャネル化を成功させる鍵となります。オムニチャネルはコールセンターをどう変えるか
オムニチャネルの未来は、カスタマーサービスの未来そのものともいえます。消費者は今後もチャネル間のスムーズな移行を期待し続けると思われますが、チャネルの性質や人気自体は変化していくでしょう。 音声やオペレーターによるサポートは依然として最もよく使われているサポート手段ですが、AIを搭載したサービスや新たな選択肢も普及しつつあります。 多くの顧客は自分で問題を解決できることが快適だと感じているので、チャットボットなどのセルフサービスが便利になれば、需要も増加していくはずです。そして、最終的にはオペレーターによる支援は一般的ではなくなるかもしれません。ただし、現時点で顧客の大半は各種サポート間の移行がスムーズに行われることを期待しているはずです。NICEによるCX向上支援
NICE CXoneは、チャネル、データ、アプリケーション、ナレッジを1つのプラットフォームに集約し、CXをダイナミックに向上させる、インタラクション中心のプラットフォームです。NICE CXoneは、規模を問わず世界中の企業で導入され、卓越したCXの実現を支援しています。クラウドネイティブのプラットフォームは、企業のニーズに合わせて柔軟に機能を追加、拡張することが可能で、コールセンターの運営を総合的に支援するよう設計されています。Back to Glossary