コールセンターに連絡した際に、「この通話はサービス向上のため録音させていただきます」という案内を聞いたことがある人は多いと思います。
リックテレコム社発刊の『コールセンター白書』によれば、通話録音システムを導入している企業は94%を超えており、コールセンターにとって通話録音は、非常に一般的な取り組みと言えます。しかし、音声を録音し活用するというステップにおいては、企業間で温度差があるのではないでしょうか。
本記事では、通話録音における個人情報の取り扱いから、音声分析や感情分析を利用して、通話データの価値を最大限に引き出すポイントをご紹介します。
通話録音と個人情報の取り扱い
コールセンターが通話録音を行うにあたり、まず気をつけておきたいのが、法律や規則の遵守です。個人情報に関する規定は国や業界によっても異なり、違反すれば、罰則や訴訟リスクにもつながる可能性あります。
以下はあくまで参考なので、実際の判断には法律の専門家や企業のコンプライアンスチームに確認を行ってください。
日本では2022年4月の個人情報保護法改正に伴い、情報保護に関しての規定が強化されています。個人情報の適切な取扱いを監督する政府機関である個人情報保護委員会によると、“通話内容から特定の個人が判別できる場合には、通話録音は個人情報に該当するとのこと。法律上、利用目的を通知する義務はあるものの、録音をしていることを伝える義務は負わない”、とされています。
ただ、多くのコールセンターでは「この通話を録音させていただきます」といったガイダンスを流し、通話録音についての通知を消費者に促しているのが現状です。
日本コールセンター協会が規定しているコールセンター業務倫理ガイドラインでは、情報の管理や通話録音の保護・開示について、以下のように定義しています。
個人情報の管理
コールセンター運営者は、個人情報の保護に関する法律や企業の方針、ガイドラインに基づいて、個人情報の漏えいや紛失、改ざんが発生しないよう十分な安全管理を行わなければならない。
通話録音の保護・開示
音声通話を使用する場合には、利用の目的をできる限り広く公表しなければならない。開示については、開示方法の手続きを定め、本人より開示を求められた場合には、開示等に応じる必要がある。
上記はあくまでも一般的な個人情報の取り扱いにすぎません。金融機関のように特にコンプライアンスやリスク管理が厳しい業界においては、要件にあったセキュリティや録音方法に則る必要があります。
音声分析により見込めるメリット
通話データはトラブルが起こった際の事実確認や、応対品質のチェックにも使えますが、音声分析ツールと合わせて使うことで、顧客体験の向上や業務効率化にも積極的に活用できます。
応対件数の削減
テキスト化した音声を分析することで、コールリーズンごとの応対時間を可視化することができます。平均処理時間が長い通話では、オペレータの説明内容やIVRの導線を改善する余地があるかもしれません。
逆に、比較的短い通話では、人間のオペレータが対応しなくとも自動化できる単純な問い合わせである可能性が高いため、FAQやチャットボットでの対応を検討します。内容に応じたプロセスを改善することで、呼量を削減し、ロイヤルカスタマーの対応や重要度の高い応対にオペレータが集中して取り組む環境を作ることができます。
クレームを未然に防ぐ
通話に含まれる特定のキーワードの傾向をモニタリングすることで、クレームや顧客離反につながりそうな問題に事前に対処することができます。例えば、「配達が遅い」や「商品がいつ届くのか」といった問い合わせが増えてきた場合には、事前に配達予定日を知らせる通知をSNSやメールで送信する、といった対処ができます。
VOC活用
VOC活動によって顧客の声を掘り下げていくことで、センターの業務改善や新たなマーケティング機会の発見につなげることができます。CRMや自社ツールと連携することで、関連部署へのデータ共有を促し、クレームだけをフィードバックするといった単純な活用から、売上向上など企業活動全体にもデータの価値を還元することが可能です。
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適切なオペレータ教育
すべての通話を録音しているものの、活用や分析においては一部のデータしかチェックできていない、という場合も少なくはないでしょう。少数のサンプルでは、たまたまパフォーマンスが良くなかったデータに基づいてフィードバックをしてしまう可能性もあり、オペレータにとっては納得のいかない評価になってしまいます。音声分析ツールを使えば、すべての通話録音を分析した上で、正確なパフォーマンス評価を行うことができます。
通話録音データを最大限に活用するには
コミュニケーション方法が多様化する現代において、録音システムを使って通話だけを録音するだけでは、十分とはいえません。録音システムの構築方法や、収集するデータもビジネス環境に合わせて見直していく必要があります。
AIで録音設定を自動化
録音システムを導入しているものの、どの通話を録音するかといったルール設計に、IT
担当者が多くの時間を費やしている場合もあるのではないでしょうか。AIを搭載した通話録音システムであれば、これまで手作業で行っていた設定作業を自動化し、短時間で通話録音を始めることができます。自動で設定を行うことで、ヒューマンエラーを減らし、IT担当者はより優先度の高い業務に集中することができます。
オペレータの作業画面を録画
ツールによっては、通話録音だけでなく、デスクトップ上でオペレータが行う業務の画面を録画することも可能です。どのようなデータを入力したか、どのような操作を行っているかをモニタリングすることで、オペレータの生産性向上につながる効率的な入力業務の設計を行うことができます。
デジタルチャネルも分析
電話だけでなく、メールやチャット、SNSなど様々なチャネルに対応するセンターも増えてきています。音声以外のノンボイスチャネルも含めて分析を行うことで、カスタマーサービスの全体像を把握し、すべてのチャネルで応対品質の向上が可能です。その際には、チャネルが変わっても同じオペレータが対応することができるシームレスなオムニチャネル応対システムを構築しておくことが前提となります。
データの価値を高める感情分析
テキスト化した通話を分析するだけでなく、顧客の感情も合わせて分析することで、より深い洞察を得ることができます。
テキスト上では「ありがとうございます」となっていても、感情を読み取ることで、サービスに満足した上での「ありがとう」なのか、意図した回答が得られなかったため早く切り上げるための「ありがとう」なのか、といった判断がつきます。
リアルタイムでのオペレータ支援
リアルタイムで感情を可視化することによって、顧客の感情に怒りのシグナルがみられた時は、オペレータは応対の方法を変更したり、必要に応じてスーパーバイザーがサポートに入り、問題が大きくなるのを事前に防ぎます。
オペレータの心的負担につながるトラブルを未然に減らすことで、オペレータは常に適切なサポートが受けられるという安心感を感じることができ、離職率の低下にもつながるでしょう。
営業業務を効率化
アウトバンドコールでは、相手の関心が低い場合には、話を早めに切り上げ、別の見込み客に時間を割くことで時間を有効活用できます。逆に相手が関心を持っているなと感じたら、積極的に話を展開することができます。
ベテランの営業マンであれば、声のトーンから相手の感情を自然と察知できるかもしれませんが、分析ツールによる客観的なデータがあれば、誰もがこのようなスキルを活用することが可能です。
感情には、言葉やテキストには表れない顧客の”本音”が、含まれています。こうした顧客のシグナルを正確に読み取ることで、顧客のニーズをより理解し、顧客体験を向上させることができます。
普遍的とも言える通話録音ですが、AIやテクノロジーの活用により、通話データに秘められた可能性をさらに引き出すことができる、と言えるでしょう。
NICEが提供する通話録音ソリューション
NICEは、通話録音から音声認識、感情分析ツールなど、通話録音に関する幅広いプロダクトや包括的なソリューションを提供しています。
NICEの通話録音システムの特徴
・通話録音のプロセスを自動化
・オムニチャネルに対応
・大量の録音データを様々な条件で検索・再生
・高度なセキュリティシステムでデータを管理
・音声分析や応対品質管理など関連機能を柔軟に追加可能
NICEは、お客様の課題やニーズに応じて、幅広いプロダクトポートフォリオの中から、最適なソリューションをご提案します。通話録音や通話データの活用に関しては、お気軽にご相談ください。